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第79話  

富麗金沙は江城最大のエンターテイメント施設であり、1階ロビーは広大だった。

巨大な機械の轟音が、ロビー全体に響き渡った。

そして、カスタムメイドのアストンマーティンが一台、ロビーに滑り込んできた。

続いて二台目。

三台目。

最終的に、12台の限定生産のスポーツカーがロビーに整列した。どれも2億円以上の価値がある。

12台の高級スポーツカーの登場に、野次馬たちは息を呑んだ。

普段は一台見かけるのも珍しいのに、今日は12台も。

最初のアストンマーティンから、斉藤晨が降りてきた。彼は江城を代表する名家、斉藤家の御曹司だ。

彼は江城SCCのリーダーであり、SCCの上級会員である。

彼ほどの地位の人間であれば、現場に駆けつける必要はなかった。しかし、彼は先日、本部から江城に二人目のSCC上級会員が現れたという連絡を受けていた。

江城SCCのリーダーとして、彼に会っておかなければならない。

ちょうど今日は、森岡翔が上級会員招集令を発令したため、彼はここへやってきたのだ。

12台の車から、12人の男女が降りてきた。男性が10人、女性が2人、年齢はほとんどが20代から30代だった。

彼らは、江城の大半の勢力を代表する人物たちだった。

普通の市民は彼らを知らなかっただろう。彼らがどれほどの力を持っているのか知る者は、限られた人間だけだった。

普通の市民にとって、江城の闇社会の頂点に立つ佐藤六指は、雲の上の存在だった。

しかし、佐藤六指は、真の大物たちが操る、駒の一つに過ぎなかったのだ。

真の大物たちは、表舞台には姿を現さず、ひっそりと暮らしていた。

斉藤晨は、彼らを従えて、森岡翔へと近づいていった。

周囲の人々は息を呑んだ。これから、激しい戦いが始まるのだろうかと思った。

「森岡さん、この件は、私の顔に免じて、穏便に済ませていただけませんか?」斉藤晨は森岡翔の目の前に来ると、そう言った。

予想されていた衝突は起こらず、人々は固唾を飲んで、今後の展開を見守っていた。

森岡翔は斉藤晨を見た。

彼こそが、江城SCC唯一の上級会員であり、リーダーだったのだ。

それに、破軍の母親の手術のために、第一病院に連絡してくれたのも、きっと彼だろう。

「破軍!」森岡翔は声をかけた。

阿部破軍は、森岡翔の声を聞いて、佐藤六指の首から手を離した。

佐藤
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